保育こども食堂ってどんなところ?

紙面p.30-31「子どもの権利を守ろう」

全国にこども食堂が広がるきっかけとなった、「気まぐれ八百屋『だんだん』」を主催する近藤博子さんのインタビューを読んでみよう。
「気まぐれ八百屋 だんだん」主催 近藤博子さんインタビュー
「子どもにとってのつながりの大切さと、こども食堂が果たす役割」
「気まぐれ八百屋 だんだん」のこども食堂の様子。
元は居酒屋だった店舗をそのまま利用した店内
❶ 子どもたちのために何ができるか
こども食堂を開こうと思ったきっかけは何ですか?
 2008年にこの場所を八百屋として開きました。2010年に、店に買い物に来てくれた近所の小学校の副校長先生から、とあるひとり親家庭の児童の話を聞きました。その家庭では、お母さんがメンタルの病気を抱えており、体調が悪いときはご飯をつくれないので、その子は学校給食以外の朝食・夕食をバナナ1本だけで過ごすこともあったそうです。登校できない時は先生が迎えに行き、先生がつくったおにぎりを保健室で食べさせて給食までの時間をつないでいたようなんです。社会にはそういう子もいるんだとびっくりする一方で、その子がご飯の代わりにバナナを食べている後ろ姿を想像して切なくなりました。それと同時に、「なんで近所の人は手伝わないのか?」と気になったんです。私自身は、田舎で生まれ、大変なことがある人をみんなで手伝って生活する、お互い様の助け合いが普通だと思っていたので。

 先生方も忙しいので、私のような近所の人ができることはないのかなと思いました。「そうだ、ここは以前は居酒屋だったので厨房があるし、みんなで温かいご飯と具沢山のみそ汁を食べたら子どもたちも元気が出るんじゃないか」と考え、こども食堂を2012年からスタートしました。昨今、社会問題とされている「子どもの貧困」については当時はあまり頭にはありませんでした。
こども食堂にはどんな人が来ますか?
 一番多いのは小学生です。子どもたちだけで来て、グループでわいわいがやがや楽しそうに食べています。未就学児の場合は親が連れてきています。中学生・高校生はバラバラと来ていますが、高校生以上になると、どちらかというと「小さい子たちの面倒をみてみようかな」とお手伝いの形で訪れる子が多いです。ひとり暮らしをしているおとなも来ます。スタッフは、お手伝いに来てくれる学生も含めて15人くらいです。
食堂では、料理をどれくらいの値段で提供されているのですか?
 スタート当初は、子どもは1食につき300円としていましたが、2016年頃から100円に、その後は上限100円として、1円でも5円でも、ゲームセンターのコインでも外国の硬貨でも、1コインならなんでもOKというスタンスに変えました。おとなは1食につき500円というのは当初から変わっていません。
❷ 食堂を利用した次の日は、家族に優しくなれる
来た人からは、食堂についてどんな感想が聞かれますか?
 うちは野菜がメインなので、保護者の方からは「子どもが家ではあまり野菜を食べないけれど、食堂では喜んでたくさん食べてくれる」と聞きました。また、コロナ禍の影響で弁当の提供に切り替えてからも、「野菜たっぷりなのでうれしい」と言う声もあります。

 働いている親にとっては、食事の準備や片付けをしなくていい、という日が一日あるだけでも全然違うようで、あるお母さんは、「食堂を利用させてもらった次の日は、家族に優しくなれます」と言っていました。やはり「自分ばかりいろんな家事を背負っている」という大変さが背景にあるのでしょう。また、料理のつくり方を聞いて家で実践して、「食堂の利用をきっかけにレパートリーが増えた」という人もいます。

 子どもたちにとっては、みんなが集まるこの場所の雰囲気が楽しいこともあるのでしょうか、「おいしい!」といって何杯もおかわりする子もいます。唐揚げやハンバーグなどの肉料理はやはり子どもに人気ですが、白いご飯が好きな子が多いのが意外でした。「ご飯だけでもいいからおかわりちょうだい」と言う子もいて、「あまり家でお米を食べられていないのかな」と思ったりしました。

 また、釣り好きな近所のおじさんが時々、東京湾などで釣れた魚を持ってきてくださるのですが、新鮮な魚を使った料理は子どもたちにはとても人気でした。
コロナ禍以前の食堂の様子。
子どもたちが気軽に立ち寄り、食事や会話を楽しんでいる。
❸ 外出自粛とお弁当提供
コロナ禍によって、食堂や、訪れる人々に変化はありましたか?
 2020年2月頃、感染の状況をみて、試験的に食堂を休みにしたのですが、その後感染が拡大して学校が臨時長期休校になりました。それ以来、一緒に食べる食堂はお休みして、予約制で弁当を提供する形にしています。子どもたちは不要不急の外出は避けるように言われていたのですが、お弁当を取りに行くという名目で食堂に来てくれました。「子どもたちにとっては、なかなか外出できないなかで、食堂に来て一言二言、お話ができてとてもよかった」と親から聞きました。当時、子どもたちは先生とも友達とも会えないことから精神的に不安定になっていたようで、「この先どうなっちゃうんだろう……?」という不安がすごくあったようです。おとなは仕事などの関係で外に出て息抜きもできますが、子どもはおとなから「外に出るな」と言われるとそうするしかないんです。大変な我慢を強いられたんだと思います。

 2022年7月現在、当初とは状況が変わってきていますが、子どもたちはいまだに学校で黙食をしていて、楽しい時間とは言えないのではないかなと思います。
お弁当を提供する形に変えられて、いかがでしたか?
 家庭で毎日お弁当をつくるのって大変なんですよね。「簡単なものでいいじゃん」ってよく言われますが、おにぎりのような簡単なものでも、つくるのはやはり大変なんです。

 生活サイクルのなかで新たなものをひとつ入れるのって大変な作業なので、そう簡単なことではないんですよね。だから、お弁当ランチの提供も夜のお弁当もとても喜ばれました。
食堂でつくられたお弁当。
野菜をふんだんに使った料理が人気である。
スタッフのみなさんによるお弁当づくりの様子。
❹ がんばりすぎると子育てを楽しめない
近年の子どもや子育て家庭のために意識されていることはありますか?
 お母さんたちは、世の中に子育ての情報があふれていることもあって、自分の子どもとほかの子どもを比べる人が増えているように感じます。私たちとしては、親子で来てくれたときに、子どもの小さな変化に気づいたら「大きくなったね!」「言葉がはっきりしてきたね!」「前は出来なかったのに、すっかりできるようになったね!」と声をかけるように意識しています。お母さんたちは、まわりの人から子どもの成長をほめてもらったり認めてもらったりするとホッとするんですよね。また、「髪切った? 似合うね!」「ちょっと疲れてそうだけど大丈夫?」と、お母さん自身の変化にも気づいたら、できるだけ声をかけています。

 父子家庭や、お母さんの帰りが遅くてお父さんといっしょに来ている場合もあります。「お父さんたち、大変だけどがんばってるよね。今の人たちはすごいな」とか、お父さんたちのがんばりもいたわるようにしています。今の社会ではそういった会話すらないですし。それぞれに認めてあげないと、どこかしらで歪みが出てしまうと思います。

 制度が整備されて、今は男女平等に仕事・家事・育児をやるように言われていますが、女性も男性もがんばりすぎているところがあるんじゃないかと思います。何もかもがんばらないといけない状況では、子育てを楽しめないんじゃないですか? コロナ禍でテレワークが普及しましたが、だからといって、その間に子どもの面倒をみられるわけではないし、逆にストレスが増えることもあるでしょう。男女ともに仕事と家庭の負担が大きくなって、子どもにとってもよくないと思います。人とのつながりが切れてしまって、人を頼りづらい。今のような子育てしづらい社会では、子どもを生もうと思う人は減ってしまうんじゃないかと思います。

 たとえば、「未就学児のいる親は17時に帰る!減った収入は国が補償する!」という法律などができたらいいですよね。子育てしやすい社会に向けて何かしらアクションを起こしていくことが大切だと思います。
子育て中の家庭に対して、周囲の人にはどんなことができるでしょうか。
 たとえば職場でお子さんの具合が悪い人がいたら、その人を帰らせてお子さんのそばにいてあげられるように、周囲の人が仕事のサポートをするなど、協力するべきだと思います。病児保育などのサービスも充実してきていますが、やはり親がそばにいてあげられることは大事ですから。職場などで、「小さい子どもがいる人はいつも迷惑かけてきて」と思う人もいると思いますが、そういうことを考えないでフォローできる体制をつくる。人手を増やすなど、工夫することが重要だと思います。子どもの気持ちに寄り添った働き方が、選択肢の一つとしてあるといいなと思います。

 高校の家庭科でも「子育て家庭の同僚が、子どもが熱を出したので休みたいというとき、自分が上司ならどう対応するか」を考える授業をやることもあると聞きましたが、すごく大事だと思います。それを学んだ高校生たちがおとなになったとき、社会の環境が整っていれば、結婚して子どもを育てたいと思う人が増えていくのではないかと思います。
❺ 想像力をもって
高校生の読者のみなさんにメッセージをお願いします。
 今の社会では、人やものに対する思いを馳せるような想像力が育みにくくなっているように思います。でも、たとえば、ある朝、友達と挨拶したときに「少し元気がないな」と小さな変化に気づいて、「どうしたの?」と声をかけてあげることでその人の心を救えるかもしれない。そういったアンテナを張っていてほしいですね。家庭科の青年期や共生社会のテーマでもありますが、時代が進んでもAIにはできない、人を思いやる気持ちを、学習を通じて日々、育んでほしいです。

 また、高校生の皆さんは、電車などで泣いている子どもを親が抱っこしてあやしている現場に居合わせたときはあるでしょうか? 大田区の子ども家庭支援センターが「在宅子育て応援パッケージ」(※写真)という、紙風船・巻き取りピーピー笛、シールをセットにしたものを配布しているんですけど、泣いている子どもに渡すと、大体は泣き止んで、その親もほっとするんです。皆さんも、泣いている子どもがいたら、「うるさいな」と思って見るよりも、たとえば折り紙とかをカバンに忍ばせておいて、その子にさっと渡すとか、行動に移せるような、そんな気持ちをもってくれるとうれしいです。

 そして、何よりも、自分を大事にしてください。人を思いやることも大事なんですけど、自分を大事にしないと人を大事にできないですからね。「今日は心が疲れたな」とか、自分の心と対話することを忘れないでほしいです。
「気まぐれ八百屋 だんだん」の外観。
ボランティア活動を行う高校生たちの企画により、地域の子どもたちが楽しい壁画を描いた。
大田区子ども家庭支援センターが配布している 「在宅子育て応援パッケージ」。
コロナ禍で、自宅で子育てをする家庭を精神的に支えることを目的にしている。
だんだんの利用者からの寄せ書き。
だんだんのイベントカレンダー(2022年7月)。
地域の人々とともにさまざまな活動が行われている。
近藤博子さん

歯科衛生士のかたわら、有機野菜や自然食品を販売する「気まぐれ八百屋 だんだん」の店主であり、一般社団法人ともしびatだんだんの代表理事も務める。2008年に「気まぐれ八百屋 だんだん」を開店。2012年よりこども食堂の活動をスタートする。だんだんでは店舗を使って、こども食堂だけでなく学習支援や勉強会など、地域の人々がかかわり合うさまざまな活動が行われている。

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